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光も影も


by kyoko_de_la_paz
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巌流島再び

巌流島再び_d0076179_2323373.jpg


作  井上ひさし
演出 蜷川幸雄
出演 藤原竜也 勝地涼 鈴木杏 白石加代子 六平直政 吉田鋼太郎 ほか
彩の国さいたま芸術劇場

再演の凄さを思い知りました。観劇後の印象が全く違った。井上先生の言葉が、あまりにも真っすぐに心に突き刺さった。




初演は、とにかく、武蔵VS小次郎だった。それは、藤原竜也VS小栗旬の存在であり、観客として、それを楽しんだ奇跡の舞台だった。井上先生の言葉も、メッセージも、もちろん届いたのだけれど、楽しんだというのが一番だった。
でも、今回は違った。
それは、井上ひさしという偉大な作家が亡くなってしまったことが最大の理由だと思う。それは、動かし様の無い事実で、観客である私にとっても、舞台を作る役者と蜷川さんにとっても、この喪失感は大きすぎたのだ。悲しい。でも、決して、後ろ向きにはなってはいけない。戯曲は、井上先生の言葉は、生きている。そう思える舞台だった。
藤原くんの武蔵は、研ぎ澄まされて、悲しみの色を増していた。同じ武蔵なのに、その背負う空気を変えて、確実に一つ上の芝居をする。やっぱり、すごい。一体、どんな役者になっていくんだろうか。この人は。
杏ちゃんの芝居も、また一段上がってるのが、素晴らしかった。パンフレットに加代子さんから発声を習ったって書いてあって、納得。声が一段深く届くようになってた。そして、何よりも、一番井上先生の言葉を伝えきっている。私は、ラストシーンの台詞が好きです。あれは、井上先生の思いそのままなんだと思う。
勝地くん、旬くんの後で、さぞやプレッシャーだろうなと思っていたけれど、比べる必要のない小次郎でした。武蔵との年齢差が、上手く表現された小次郎は、観ていて肩入れしたくなる。真っすぐて、若くて、人間らしい小次郎だった。
加代子さんの『蛸』は圧巻すぎたし、鋼太郎さんの『孝行狸』は名作。六平さんとの三人が、笑いを創り出すから、戯曲の持つメッセージがより強く心に残るのだと思う。
井上先生の言葉は、「思い」そのもの。私は、その言葉を役者の声と体を通して聞いた。その言葉を聞いた責任を、私は果たしたいと思う。私も「思い」を言葉していきたいと思うんだ。
by kyoko_de_la_paz | 2010-05-16 23:23 | play